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きたないきもち(タイニャミ)

「タイマー!かっこいいねー!」

「ありがとー!でも、ぼくはぷりちーな妖精だし?」

「タイマー君カワイイー!応援してるよー!」

「ありがと!これからも応援よろしくねー!」

見慣れた握手会イベントの光景。

タイマーは、笑顔を絶やさず、ファンのみんなと握手していた。

そう、見慣れた光景。

でも、楽しい気分にはなれないのも、いつものこと。

もやもや。

なんとなく面白くなくて、あたしはスタッフ専用の控え室に戻った。

「ニャミちゃん、タイマーを呼んできてくれるかな?」

マネージャーのアイスに頼まれた。

時計を見ると、もうそんな時間。

他のスタッフの人が誘導してくれているだろうし、ファンに囲まれている、なんてことはないだろうけど。

タイマーは愛想もいいので、なんだかんだ予定から遅れているかもしれない。

それはあんたの仕事でしょ、って反論したら、ニャミちゃんが呼んでくれれば一発ですぐ来るから、などと言われた。

訳が分からないわよ。

 隣で、ニシシ、とかいう謎の笑い声を上げているミミちゃんを盛大に無視して、あたしは言われたとおり、握手会の会場へ戻った。

予想に反して、タイマーはファンを捌ききっていて、最後のひとりと握手をしているところだった。

「タイマーさん!いつも、応援しています!その、歌もとっても大好きで、自作されている服も素敵で……尊敬してます」

よくいるファンとは違って、ちょっと内気そうな女の子だった。

にこやかな笑顔で応対するタイマー。

もやもや。

違う、タイマーに嫉妬しているわけじゃない。

タイマーはあたしのことが大好きだ、って言ってくれているし、あたしもそれを信じてる。

タイマーの笑顔が、今この時、この瞬間は、あの女の子のためだけに向けられている。

ただ、それだけのことが、あたしをもやもやした気分にさせたんだ。

「タイマー、時間だって、アイスが呼んでるよ」

まだ握手した手が離れきってない、そう知っていたのに、あたしはわざわざそのタイミングでタイマーに声をかけた。

「ニャミちゃん!」

電光石火。

声をかけるや否や、タイマーはあたしに抱きついてきた。

「ちょ、ダーリン、やめてってば!恥ずかしいじゃない!」

見られてるじゃない、ってアイコンタクトをしたけど、伝わらなかった。

いや、無視されたのかもしれない。

くそぅ、人前で『ダーリン』呼びなんて、したことないってのに!

「あ、もうそんな時間か」

応援ありがとね、じゃ、と最後まで笑顔を作って女の子に会釈をし、 タイマーはさっさと控え室に戻っていってしまった。

残されたのは、誘導スタッフと、あたしと、その女の子。

女の子の笑顔は、ちょっと引きつっていたように見えた。

ごめんね。

ごめんね。せっかくの機会なのに、邪魔しちゃって。

あたしのダーリンは、あたしだけのダーリンじゃない。

それは、あたしだってそうで、あたしだってダーリンだけのあたしじゃない。

そんなことは、ずっと昔から、この仕事を選んだ時から知ってたこと。

だから、これは、ほんの気まぐれ。

たまたま出てきてしまった、ワガママなの。

ごめんね。

許してね。

喫茶店デート(レオさな)

「ね、ここ、ここ!」

いつも以上にはしゃぎ気味のレオくんに連れられて、喫茶店に来た。

どうやら、チョコレートをフィーチャーした喫茶店みたい。

レオくんも来たことはなくって、ネットでたまたま見つけたんだって。

 「ここ見つけた瞬間、さなえちゃんと行ってみたい、って思ったんだ」

なんてキラキラした笑顔で言われちゃったら、わたしまで幸せな気持ちが伝染しちゃう。

レオくんは、たまに、ちょっとずるい。

メニューを見てびっくり。

食べ物から飲み物まで、ホントに全部のメニューがチョコでできてる、なんて思わなかったもの。

レオくんは、と言えば、さっきから目をキラキラさせっぱなしで、あ、これも美味しそう、こっちは何が違うのかな、なんて真剣に吟味してる。

「それじゃぁねぇ……まずは、ちょっと苦目だけどカカオがたっぷり入ってる、っていう、エクアドルのやつと、こっちのミルクチョコレートのブレンド!それからガトーショコラにこのミルクココアで!」

「『まずは』?」

「うん、後から追加で注文するから」

「そんなに頼んで、まだ?」

思わず吹き出してしまう。

レオくんも、我に返ったのか、ちょっと頑張りすぎたかな、なんて言って照れ笑い。

「ね、こちらの持ち帰りできるチョコは、持ち帰りにしましょうよ。今度、レオくんのおうちで食べましょ?」

「そっか、そうしよっか」

甘いものばかりだったので、珍しくわたしがブラックコーヒーを注文してしまった。

相変わらず、メニューを吟味しているレオくん。

本当に幸せそうな横顔を見ているのも、好きなのだけど。

せっかくのデートなんだし、わたしとおしゃべりも、して欲しいな、なんて。

「ね、何か気になるメニューがあったの?」

顔を覗き込む。

レオくんは、悪びれず、ごめんごめん、なんて言って笑って、ひとつを指さした。

「なにこれ、一日一枚のチョコレートを一年分!?」

「ね、素敵じゃない?」

「やっぱり、レオくんなのね。……あら、これ、一日に二枚入ってるのね」

「そうそう。これを、さなえちゃんと毎日一枚ずつ食べて過ごせたら、素敵だな、って思って」

「……ッッ!」

咄嗟に俯いた。顔が火照るのが分かる。

どうしよう、レオくんの顔見られない。

レオくんは、全く何事も無かったかのように、どうしたのさなえちゃん、なんて言って覗きこんでくる。

思わず目線を逸らしてしまう。

ああもう、レオくん!あなたって人は!

バレンタイン(レオさな)

それじゃ、リエは帰るね、そう言ってリエちゃんは立ち上がった。

あ、送っていくよ、と言ってスギくんはリエちゃんの後をついて出ていってしまった。

渡すなら、今しか、ない。

「あ、あのっ、レオくん!」

「ん、なに?」

「その……さっきのとは別に、レオくん専用のチョコレートを作ってきたの」

そう言って、カバンからトリュフを取り出す。

「あのね、もし、レオくんがもう好きな人がいるのだったら、そう言ってくれて構わないのだけれど……その、わたしにとって、レオくんはトクベツな男の人だよって、気持ちを込めたから……受け取って、くれる?」

そう言って、じっとレオくんの顔を見つめる。

レオくんは、顔をほころばせた。

「うれしいよ、ありがとう。ぼくにとっても、さなえちゃんはトクベツな女の子だから、まだ今日はチョコレートを他の誰からももらってないんだ」

レオくんも。

レオくんも、わたしのことをトクベツな女の子だって思ってくれてたんだ。

そんな嬉しさがじわじわ沸き起こるのとは別に、ひとつ引っかかるところがあった。

「『誰からも』?リエちゃんからももらってないの?」

「あぁ、リエちゃんには昨日もらったんだ」

「昨日?昨日リエちゃんに会ってたの?」

そう訊くと、レオくんは露骨に、しまった、って顔をした。

「あー、えーとその……怒らないで聞いてくれる……?」

そう言って、レオくんはきまり悪そうに話し始めた。

「その、さ……ぼくとしては、さなえちゃんが誰にチョコレートをあげるつもりなのか、とか、ぼくはチョコをもらえるのか、とかが気になって夜も眠れなかったんですよ。で、その……リエちゃんなら知ってるかなって思って、ね、その……最近リエちゃんから、さなえちゃん情報をもらってたわけでして」

昨日は、当日はさなえちゃんのために空けておくんでしょ、だから、って、昨日のうちにチョコをもらってたんだ。

そうわたわたと言うレオくん。

そっか。

そうだったのか。

最近レオくんとリエちゃんがなんだか仲良さそうだったのも。

昨日リエちゃんに会っていたのも。

全部、レオくんがわたしのことを、トクベツな女の子だって思ってくれてたからだったんだ。

なんだか、昨日ぐるぐる悩んでたのはなんだったんだろう、って思って、思わず笑いがこみ上げてきてしまった。

「その、怒ってない…?」

縮こまってそう言うレオくんがなんだか可愛らしくて、わたしはまた笑った。

「ううん、全然、怒ってなんてないよ。レオくんがわたしのことを、トクベツだって思ってくれてたってことだもの」

そう言うと、レオくんはますますきまり悪そうな顔をした。恥ずかしそうにも見える。

なんだか、レオくん、可愛いわ。

思わずレオくんに抱きつく。

うわっ、といってよろけながらも、レオくんはわたしを受け止めてくれた。

 「ね、レオくん」

「な、なに?」

「大好き」

「あ、ありがとう。ぼくも、さなえちゃんが好きだよ」

「嬉しい」

あーあ、ホントはもっとカッコよくキメるつもりだったのになー。さなえちゃんに先に言わせちゃうなんて!なんてレオくんがぼやく。

そんなレオくんが、やっぱり可愛く見えてしまう。

「ううん、でも、わたし、ちょっとカッコわるいレオくんも、可愛らしくて好きだもの」

「……さなえちゃん、それ反則」

 

 

 

- - - - -

(良かった。うまくいったみたいね)

(行け、レオ!そこでキスだ、ちゅーだ!)

(……い、いきなりキスはハードル高いよスギくん)

(2人が進まなくてじれったいのがいけないんだよ。なんなら、ぼくとリエちゃんが2人にお手本見せてあげようか?)

(おてっ…………スギくん!リエのことからかったでしょー!)

(ぼくはほんきだよー?)

(バカーッ!)

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(スギリエ)

「うわ、いい天気だ」

窓から差し込んでくる日差しが、あまりに眩しくて目覚めた朝。

カーテンを閉め直して二度寝をするか、とも思ったけど、あまりにいい天気なのでもったいない。

ついこの間までマスタリング作業にかかりっきりで、思えば完全なオフなんて久々だ。

せっかくの天気だし、街中をぶらぶらするのも悪くないかな。

準備をして、さぁでかけるぞ、というタイミングで、携帯の着信が鳴った。

ディスプレイに表示された名前を見て、思わず顔がほころぶ。

「もしもし、リエちゃん?」

「あ、スギくん、おはよー!もう起きてた?」

「あ、うん、さっき起きたとこ」

「ねえねえ、すっごくいいお天気だよ!リエとどこかへお出かけしない?」

そこまで言ってから、あ、でもお仕事忙しいかなあ、ごめんなさい、だなんてわたわた慌て始めたので、思わず吹き出してしまった。

「ううん、大丈夫だよ。つい最近まで忙しかったけど、今日は完全なオフ」

「良かったあっ!」

「僕も、今まさに、天気が良すぎて家でごろごろするのももったいないかな、って思ってたとこ」

「本当っ?気が合うね!」

「うん。リエちゃんさえ良ければ、ご一緒させてもらえませんか?」

「はい、喜んで!」

- - - - -

待ち合わせ場所に現れたリエちゃんは、白のワンピースを着ていた。

割と露出が多めで、僕としては目のやり場に困るというか、他の男の目線が気になるというか、複雑な心境。

そっか、もう初夏だっけ。

「暑くなってきたね」

「うん」

暑いとお化粧がすぐとれちゃうから、簡単なのしかできないの、なんていってこぼす。

「リエちゃんはお化粧しなくったって、いつでも可愛いのに」

なんてうっかり口を滑らせると、リエちゃんは頬を染めて

「もう、スギくんは、いつもリエを甘やかすんだから」

なんて、怒ってるんだから照れてるんだか分からない。

ま、そこが可愛いんだけどね。

「でも、リエは夏大好きだよ!」

海にも行きたいし、山にハイキングでもいいし、あ、アイスも食べられるし……なんて言ってて、笑ってしまった。

「リエちゃんは、どの季節も大好きじゃない」

「うん!だって、秋には秋の、冬には冬の、春には春の、やりたいことがいっぱいあるもの」

リエちゃんはいっつも全力一杯だ。

それは、学校の課題がある日も、オフの日も同じで。

たまに、ずーっと全力で生きてて、羨ましいな、って思う反面、大丈夫かな、疲れないのかな、って思うときもある。

そんなリエちゃんを、僕が支えられるようになる、ってのがひとつの目標だ。

言わないけどね。

「でもね、」

そう言って、リエちゃんは僕の手を取って向きあった。

「スギくんと出会ってから、もっともっと、好きになってるんだよ?もっともっと、たっくさん楽しめたし、これからもずっと、スギくんと一緒にどの季節も楽しみたいなって」

そう言って、照れながら笑った。

リエちゃんってば、それすっごい殺し文句だって。

僕もリエちゃんの手を握り返した。

「では、本日はどちらへまいりましょうか、お姫様?」

無題(スギリエ・レオさな前提のスギ+レオ)

「うるさいよ!!放っておいてくれ!!」

そう怒鳴って手をデスクに叩きつけ、スギを睨む。

この時すでに、

『あぁ……なんでこんなこと言ってるんだろう……』

って後悔してる自分もいるんだけど、その場の勢いで引っ込みがつかなくなってたんだ。

スギは、少しの間僕の顔を見ていて、それからどこかへ出かけていってしまった。

- - - - -

事の顛末は単純すぎるほど単純だった。

僕が、作曲作業が思うように進まなくてイライラしていた。ただそれだけ。

気を使って声をかけてくれたスギに八つ当たりだなんて、最低だ。

- - - - -

スギが出ていって1分もしないうちに後悔タイムはやってきた。

誰がどう見たって僕が悪いと思うだろうし、僕だって僕が悪いって思ってる。

だったら、早くスギに謝ればいいって、それは分かってるんだけど、ついさっき怒鳴り散らしちゃったばっかりだから、いきなりケータイにかけても、スギだって怒ってるだろう。

出てくれないかもしれないし、出てくれてもスギが僕に思いっきり怒ってきたら、僕達の関係がどうなっちゃうかも知れたもんじゃない。

あぁスギレオも解散しちゃうのかなー…なんて、思考がネガティブに行ってるところで、ケータイの着信音が鳴り響いた。

思わず飛び上がってディスプレイを確認する。

ディスプレイの名前は、スギではなかったけど、僕が大好きな女の子の名前だった。

「もしもし!さなえちゃん?!」

『もしもし。レオくん、今大丈夫?』

「あぁ、うん、大丈夫だよ。どうしたの?」

『お仕事は?忙しくない?』

「あぁ……うん、ちょっと今煮詰まっちゃっててさ」

『ね、あのね、もし良かったら、今から気分転換にお出かけしない?』

「え、今から?」

『うん。ほら、煮詰まってるときはリフレッシュも大事だって、よく言うでしょう?』

今日のさなえちゃんは、いつもより積極的だ。

さなえちゃんは基本的に、僕の仕事が忙しい時は、あまりワガママを言ったりしない。

僕の仕事を理解してくれてるってのは嬉しいし、感謝もしてるんだけど、たまにはワガママを言って欲しいって思うときもある。叶えてあげられるかどうかは、また別だけどさ。

今日は、僕もこのまま作業を続けても捗りそうにないし、さなえちゃんに付き合ってリフレッシュするのもいいかもな。

「そうだね、じゃあお出かけしようかな」

『良かった!じゃあいつもの場所に30分後とかでどう?』

「分かった。またね」

いくらいろいろあったからって、さなえちゃんの前でみっともない顔をするわけにはいかない。

僕は出かける準備をするべく、超特急で洗面所に入った。

- - - - -

「お待たせ」

「ううん、今来たところよ。それじゃ、行きましょう」

「まずどこに行く?いつものレコードショップかな?」

僕がそう言うと、さなえちゃんは、くすくすと笑って

「やっぱりいつでも音楽のことなのね。レオくんらしいわ」

と言った後で、

「でも、レオくんはがんばりすぎ、な気もするわ。いつも音楽のことを考えてて、それはとっても大事なことだって思うけど、いつもそれじゃあレオくんがパンクしちゃうもの」

と、心配そうに眉をひそめた。

 「ね、今日は行ってみたい雑貨屋さんがあるの。だめ?」

さなえちゃんのおねだりに僕は弱い。

「いいよ」

「良かった!」

 - - - - -

珍しくはしゃぎ気味だったにしては、さなえちゃんが買ったものは少なめだった。

「それだけでいいのかい?」

「うん。ね、ね、最後にお茶しましょ!この近くにオススメの喫茶店があるの」

そう言ったさなえちゃんの後をついていくと、ちょっとお洒落な雰囲気の喫茶店があった。

うん、確かにBGMも雰囲気が出てる、なんて考えてたら、

「もー、また音楽のこと考えてたでしょ?」

なんてさなえちゃんに苦笑されてしまった。どうやらお見通しらしい。

「お仕事、大変なんだって?」

さなえちゃんのカフェラテとブルーベリーパイ、僕のブラックコーヒーとガトーショコラが運ばれてきたタイミングで、 さなえちゃんは切り出した。

「私は、レオくんのつくる音楽のこと、分からないしお手伝いすることもできないわ。でも、レオくんが疲れた時に、そばにいることくらいならできると思うの。私が必要な時は、もっと頼ってほしいな」

一気にそう言って、さなえちゃんは困ったような、泣きそうな微笑みを浮かべた。

ごめん。情けない男で。

違う。さなえちゃんに、もっと僕を頼って欲しいんだ。

そんないろんな感情が渦巻いて、僕まで泣きそうになっちゃったけど、なんとか笑みを浮かべて、ありがとう、と言うことができた。

「ありがとう、さなえちゃん。おかげでリフレッシュできたし、疲れも吹き飛んだ気がするよ。またがんばれそうだ」

そう言うと、さなえちゃんは、彼女らしいふわっとした暖かい微笑みを浮かべた。

「良かった!実はね、スギくんから連絡をもらったの」

「スギが?」

「うん、その……レオくんが大分参ってるみたいだから励ましてやってくれ、って」

 知らなかった。

スギはもう怒ってしまったものだと思い込んでいた。

「さなえちゃん」

「ん?なに?」

「実は……」

- - -

「そう、それでスギくんとケンカしちゃったのね」

「ケンカっていうか、僕が一方的に八つ当たりしちゃって……。スギには酷いことをしちゃった。謝らなくちゃ、って思うんだけど……」

「まぁ~~~~~~ったく、僕がレオの行動パターンくらい分からない訳がないだろ?」

背中から、聞き覚えのある声が。

振り向くと、何故かそこにスギが居た。

驚きのあまり言葉も出ない。

えっ、と思わず前を見ると、さなえちゃんが胸の前で両手を合わせて、ごめんね、のポーズをしていた。

どうやら仕組まれていたらしい。

「で、お疲れのレオくん、さなえちゃんとデートして元気出た?」

「あ、あぁ、うん、えーっと、おかげさまで」

「なら良かった。明日からまたがんばってもらうんだから、いつまでもヘタレてちゃ困るよ、相棒?」

「あ、スギ……その、さっきは……」

「ストップ!言わなくても分かってるさ。付き合い長いんだから」

スギは、呆れたような顔で笑っていた。

「じゃ、デートの続き、楽しんでおいで。さなえちゃん、デート邪魔しちゃってごめんね」

そう言って、ひらひらと手を振りながら立ち去っていった。

「スギ!今度君が落ち込んでる時は、僕が力になるから!」

その背中に叫ぶと、

「僕は要らないよ、完璧なんだから」

振り向きざまにニヤリと笑って店を出ていった。

……可愛気のないヤツめ。

「ふたりとも、お互いのことを何から何まで分かり合ってるのね。羨ましいな」

そう言ってニコニコ笑うさなえちゃん。

「ううん、さなえちゃんのおかげだよ。確かにスギは僕のことを何から何まで知ってるかもしれないけど、こんなに僕を元気にするのは、さなえちゃんしかできないからね」

そう言うと、顔を少し赤くするさなえちゃん。

いいことを思いついた。

「ね、さなえちゃん。さなえちゃんにしかできない方法で、僕にもっと元気をくれないかな?」

そう言いながら、彼女の頬に手を伸ばす。

すっかりいつもの調子を取り戻した僕。

すると、さなえちゃんは、もっと顔を赤くしながら、こくり、と小さく頷いて目を閉じた。可愛い。

さなえちゃん、今日は本当にありがとう。

その気持ちを込めて、僕は彼女の顔に唇を寄せた。

無題(スギリエ・レオさな前提のスギ+さな)

今日はスギくんと喫茶店でお喋りの予定。

前のパーティーで一緒に歌ってくれたお礼と……それから、リエちゃんのこともどう思ってるのか、訊いておかなきゃ。リエちゃんには内緒だけどね。

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今日は、相棒が一目惚れしたあの娘と待ち合わせ。

恋人がいるのか聞いてきてくれ、なんて頼まれてしまったから、まぁ安請け合いしちゃったけどね。

それに、彼女とはいろいろ話してみたかったんだ。

 

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早めに喫茶店に入って注文をしようとしていると、待ち合わせ時刻5分前くらいにスギくんは現れた。

「早いね、ごめん。待たせちゃったかな?」

「いいえ、今来たばかりだもの」

「そっか、それはよかった」

なんて笑顔で言ってスギくんは腰を下ろす。

二人きりでお話なんて今までなかったからちょっと緊張しちゃう。

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「前のパーティーでは、一緒に歌ってくれてありがとう。リエちゃんもとっても喜んでくれたわ」

「それはなにより。僕も楽しかったよ。さなえちゃんさえ良ければ、またやりたいくらいさ」

これは僕の本心。彼女には音楽の才能がある、そう思う。

「ありがとう」

そう言って彼女は柔らかく微笑む。あぁ、これが相棒を落とした笑顔か。

 

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 「ね、スギくん、ひとつ聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?嫌だったらそう言ってもらって構わないのだけど…」

私はそう前置きをして言った。

ここからが難しい。

スギくんに恋人がいるのか、好きな人がいるのか聞き出さないと。

しかも、私がスギくんのことを好きだって誤解されないように。

 

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「いいよ、なんでもきいてくれて」

「その……スギくんは、心を決めた女性とかって、もういるのかしら?」

僕はちょっとビックリした。

彼女は僕にはあまり興味がなさそうだったから、そんなことを突っ込んでくるなんて。

「いや、いないよ、今のところ」

そう答えると、彼女は目に見えて安堵した。

 

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 「そう……えっと、その、お付き合いをしていた女性、とかはいたのよね?」

一応確認しておく私。

「うん。でも、縁がなかったというか、僕が音楽にかまけすぎてたせいか、ふられちゃってばっかりだね」

なんていってスギくんは苦笑い。

やっぱり、良くないことを訊いちゃったかしら。

 

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「あ、えーとその、私の友達がスギくんの大ファンで……ちょっと聞いてきてくれって頼まれちゃって……」

と、わたわたするさなえちゃん。

これで合点がいった。さなえちゃんの親友、リエちゃんのことだな。

普通は、自分が好きな人に質問するときに使う言い訳なんだろうけどね。

 

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「さなえちゃんこそ、意中の男性はもういるのかい?」

逆にスギくんが聞き返してきた。

まずいわ。スギくんのことが好きだって誤解されないようにしないと。

さっきは私が質問したのだから、私もちゃんと答えないと、よね。

「私はそもそも縁がなかったのかしら……今は学校の課題で一杯一杯だし」

 

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よし、レオ。第一関門突破したぞ。

「そっか、恋をしたい、って思ってるわけじゃないんだ?」

「良い縁にめぐり逢えたら、したい、って思うけれど。恋がしたい、って感じじゃないわね」

手強い。

「こんな人とだったら恋をしたい、みたいなタイプはいないの?」

 

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スギくんがやけに突っ込んだ質問をしてくる。どうしたのかしら。

「そうね…私を大切にしてくれて、服飾を理解してくれる人なら誰でもいいかな」

「じゃぁ苦手なタイプとかは?」

「うーん、そうねぇ……敢えて言うなら、タバコを吸う人がニガテかな?」

そう言うとスギくんは目に見えて落胆した。

 

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 うわ、レオ、ごめん。さなえちゃん、タバコがニガテだったんだ。

「あ、敢えて言うなら、よ?」

なんて付け加えてるさなえちゃんに返す笑顔も、心なしかひきつってる。

『好みのタイプを聞き出してきてやるよ』

なんて啖呵切って出てきたのに、相棒に顔向けできない。

 

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スギくんが動揺しているように見えるのだけど、どうしたのかしら。

スギくんはタバコ吸わないはずなのに……。

 

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レオ、君、今日から禁煙するんだ。

wasara:

2012-02-26 - かまろっく
mazurutan:

「お兄ちゃん、起きてる?」/「水乃ミナト」のイラスト [pixiv]
これはあなたの人生です。
自分が好きなことをやりなさい。
そして、たくさんやりなさい。
何か気に入らないことがあれば、それを変えなさい。
今の仕事が気に入らなければ、やめなさい。
時間が足りないのなら、テレビを見るのをやめなさい。
人生をかけて愛する人を探しているのなら、それもやめなさい。
その人は、あなたが自分の好きなことを始めたときにあらわれます。
考えすぎるのをやめなさい。人生はシンプルです。
すべての感情は美しい。食事を、ひと口ひと口を味わいなさい。
新しい事や人々との出会いに、心を、腕を、そしてハートを開きなさい。
私たちは、それぞれの違いで結びついているのです。
自分のまわりの人々に、何に情熱を傾けているかを聞きなさい。
そして、その人たちにあなた自身の夢も語りなさい。
たくさん旅をしなさい。
道に迷うことで、新しい自分を発見するでしょう。
ときにチャンスは一度だけしか訪れません。しっかりつかみなさい。
人生とは、あなたが出会う人々であり、その人たちとあなたが作り出すもの。
だから、待っていないで何か作ることをはじめなさい。
人生は短い。
情熱を身にまとい、自分の夢を生きよう。